日本基督教団御殿場教会  United Church of Christ in Japan Gotenba church

憐れに思って彼を赦し

説教

タイトル:「憐れに思って彼を赦し
聖書  : マタイ18:21-35
年月日 : 2012-2-5
        
弟子のペトロが、イエス様に尋ねています。「兄弟が私に対して罪を犯したなら、
何回赦すべきでしょうか。7回までですか」。聖書に出てくる数の中で、「聖なる数、
完全数」と呼ばれる数の1つが7です。だから7回の赦しはある意味、人に出来る
ギリギリの数と言うことでしょう。そしてこの数を越えたら、相手を赦さなくても
済むことになります。するとイエス様はペトロに、「7回どころか7の70倍までも
赦しなさい」と言われました。自分が出来る範囲で赦すのではなくて「どこまでも
限りなく赦しなさい」と言うのです。そしてイエス様は「天の国」について、王と
借金を抱えた家来の例え話をされています。
王が家来たちに貸した金の決済をしていた時、1万タラントンの借金をして返済
していない家来が、王の前に連れてこられました。1万タラントンは「約16万年分
の賃金にあたる」とある本に書いてありましたが、家来の借金は、一生かかっても
到底、返済できる額ではありません。途方もない額の借金を返済するため、家来や
その妻、子ども、持ち物もすべて売り払えと、王は命じています。それでも借金の
額には、遠く及ばないのは分かりきっています。
家来は王の前にひれ伏すと、「どうか待ってください。きっと全部お返しします」
と必死になって王に願いました。家来の言葉がその場限りの言い逃れであり、何年
待っても借金を全部返せないのは誰の目にも明らかです。普通なら「いいかげんな
ことを言うな」と怒鳴られる場面です。でも意外なことに、ひれ伏して借金返済の
猶予を願っている家来の姿を見て、この王は、憐れに思ってしまうのです。
しかも「憐れに思う」と言う言葉は、これまでも何度か聖書に出てきましたが、
「自分のはらわたが、引きちぎられるように痛む」と言う意味の言葉です。
莫大な借金をして王に国家的な損害を与えたひどい家来です。「家来」と訳されて
いますが、原文は「僕」です。僕に過ぎない男です。見せしめに、八つ裂きにされて
殺されても当然なのに、一国の王が僕の苦しみを、まるで自分のことのように身を
よじって痛み、憐れむのです。そして返すあてもないのに「待ってください」と、
言い逃れをする不誠実な僕を、王は赦します。さらに僕を赦すだけでなくて、彼の
莫大な借金も、この王は全額帳消しにしてしまうのです。
絶対にありえないことです。そうです。でも絶対にありえないのに、それでも尚
憐れんでくださるのが、神様です。イエス様の「天の国」の例え話に登場する僕を
憐れみ、借金を全額帳消しにした王とは、天の国を支配される神様のことです。
家来が赦され、莫大な借金が全額帳消しにされたのは、家来が何かしたからでは
なくて、ただ王の憐みによってです。家来のように、本来、ありえないことなのに、
先程、礼拝の中で私達に、神様からの罪の赦しが宣言されました。私達も、神様に
すべての罪を赦されています。罪と言う、「神様への支払いきれない莫大な借金」を
全額、神様から帳消しにされています。私達が何かしたからではなく、ただ神様の
一方的な憐み、神様ご自身が身をよじって痛むほどの、ありえない憐みによって
私達は「罪のない者」として、奇跡的に赦されています。
そして「ありえない神様の憐み」の揺るぎない証拠が、神様の独り子イエス様の
十字架の死です。神様に背を向ける罪。アダムに始まった全人類の罪の大借金を、
神様の独り子が肩代わりしました。神様の憐れみは、この世において、「イエス様の
十字架の死と引き換え」と言う超法規的手段となって現れました。このイエス様の
十字架の死によって、私達は奇跡的な罪の赦しを受けています。
もしイエス様の十字架の死がなければ、私達は終わりの日の審判で、あの家来の
ように嘆願しながら、有罪判決を聞くはずです。でも私達がそうなることを神様は
憐み、私達ではなく、イエス様を十字架につけて、私達の身代わりにされました。
私達の罪が赦されているのは当たり前ではありません。ただ神様の憐みによって、
イエス様の十字架によって、ありえない罪の赦しを奇跡的に受けているのです。
本当は赦されるはずがないのに、絶対にありえないのに、これまでの罪を、
すべて神様に赦されて、今日、私達が生きていることは、奇跡です。これからも
罪赦されて、日々新しく生きることが赦されているのは、奇跡です。地上の命を
終えても、なお神様と共に生きることが、私達に赦されているのは、奇跡です。
神様の憐みから生まれる奇跡、神様の愛から生まれる奇跡です。このすばらしい
奇跡が、すべての人に差し出されていることを告げる「良き知らせ」が、福音です。
王の憐みによって、莫大な借金が帳消しにされた家来が外に出ると、自分に100
デナリオンの借金がある仲間と会いました。1万タランクトンの借金に比べたら、
100デナリオンは、わずかな金額です。でも家来は仲間の首をしめて「借金を返せ」
と迫ります。仲間は、先程家来が王に言ったのと同じ言葉で、「どうか待ってくれ」
と借金の猶予を必死で願うのですが、家来は容赦なく、仲間を牢に入れました。
家来が仲間に貸していた100デナリオンも、実は王から借金していた1万タラン
トンの中の一部のはずです。家来は「オレの金を返せ」と仲間の首をしめましたが、
それは王の金であって、彼の金ではなかったのです。このことを聞いた王は怒って
家来を呼びつけて言います。
 「不届きな家来だ。お前が頼んだから、借金を全部帳消しにしてやったのだ。
私がお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべき
ではなかったか」。
「不届きだ」と王が怒っているのは、家来が借金を返せなかったことではなくて、
自分が受けた憐みを、仲間と分かち合わなかったことです。仲間を憐れまず、赦さ
なかった家来は牢に入れられ、生涯、牢を出られないでしょう。そしてイエス様は
「あなたがたの一人一人が心から兄弟を赦さないなら、私の天の父もあなたがたに
同じようになさるであろう」と、例え話の最後に言っています。
家来は、仲間を憐れむことなく、仲間のわずかな借金も赦さず、牢に入れました。
自分が王の深い憐みによって赦されたことを全く自覚しておらず、王のありえない
奇跡的な憐みにも、全く感謝していないからです。私達も、神様の一方的な憐みに
よってすべての罪を赦され、生かされている奇跡に心底感動していなければ、
そして身代わりになられた十字架のイエス様の痛みを、我が痛みとして、心から
感謝し、ひれ伏すことがなければ、人を赦すことは出来ません。
例え話で「仲間」と訳された言葉は「共に僕」と言う意味の言葉です。少なくとも
教会に集っている私達は、同じ神様(父、子、聖霊なる三位一体の神様)に共に仕えて
いる僕であり仲間です。ありえない神様の憐みが十字架の上に結実していることを
告げ知らされて、神様の法外な赦しに感謝して、喜び仕えている仲間同士です。
「母親が自分の産んだ子を憐れまないであろうか。たとえ女たちが忘れようとも、
私があなたを忘れることは決してない。見よ、私はあなたを、私の手のひらに
刻みつける」(イザヤ49:15-16)
周りの人がすべて敵になっても、イエス様の十字架のとりなし、十字架の赦しに
よって、神様は私を赦して受け入れてくださる。神様は私を愛して受け入れてくだ
さる。この深い憐みに触れて、神様の前に共にひれ伏している仲間が、私達です。
気が合うから集まった仲間ではなくて、年齢も性格も違うけれど、神様に従えない
不自由で愚かな罪人を憐れみ、赦し、受け入れてくださる神様の愛の御腕を信じて、
その御腕の中に飛び込み、こんな自分に「生きていいよ。安心しなさい」と告げて
くださる神様のために何でもしたくて、僕となった仲間なのです。神様は僕たちを
「地上の主の体・教会」に集めて、世界中に「神様の憐みと赦し」を広げます。
神様から私達に「罪の赦しと言う命のパン」が与えられています。そのパンを
仲間同士で分かち合って食べます。多くの人と分かち合っても、決して足りなく
なることのない命のパンを食べて、互いに愛しあい、赦しあいます。互いの中に
「神様の憐みとイエス様の十字架の罪の赦し」が、ハッキリ見えてくるからです。
 誰にでも「赦せない」と思う相手がいます。「こんなことをされた。あんなことを
言われた」と言う被害者意識で、どうしても赦せない相手がいます。「被害者だ」と
いう苦しみ痛みがあり、それが赦せない理由、大義名分になります。でも「自分の
目が悪いことを言い訳にして、自己憐憫に陥っていた」と、昔ある宣教師の先生が
言われた言葉が今でも心に残っています。自分のことも他人のことも赦さないで、
愛さないで、お互いに傷つけあって、苦しんで生きている愚かな人間を憐れむ
がゆえに、はらわたが引き裂かれるような神様の痛みと苦しみ。愚かな人間を
愛するがゆえに、全人類の罪を引き受けて、十字架で磔にされたイエス様の痛
みと苦しみ。これ以上の痛み、苦しみはありません。私達のどんな被害者意識も
大義名分も、神様の憐みの痛みと苦しみの前には、膝を屈めます。
神様が憐み、痛み苦しむほど、私達は愛されています。この神様に自分も相手も
委ねて、大胆に愛して赦し合いましょう。そして神様の憐みの力を証しましょう。

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