日本基督教団御殿場教会  United Church of Christ in Japan Gotenba church

主よ、どうかお助けください

説教

タイトル:「主よ、どうかお助けください
聖書  : マタイ15:21-28   
年月日 : 2011-4-3

  前回、イエス様は「口から入るものではなく、口から出るもの、心から出てくる
ものこそが人を汚す」と言って、汚れに関する昔からの言い伝えを否定しました。
そしてやってきたのは、ティルスとシドンの地方です。ここはユダヤ人からすれば、
「神を知らない汚れた異邦人の汚れた土地」です。わざわざ汚れた異邦人の土地に
入ったことにも、汚れの言い伝えを否定するイエス様の思いが表れています。
そこでカナンの女がイエス様に助けを求めています。カナン人はカナンの原住民
です。エジプトからカナンに帰ったユダヤ人は、土地を巡って、カナン人と争って
きました。ユダヤ人とカナン人は言うならば、先祖代々敵同士です。でもカナン人
の女は「主よ、ダビデの子よ、私を憐れんでください」とイエス様に叫んでいます。
彼女の娘が悪霊のため、重い病にかかってひどく苦しんでいたからです。
 イエス様の偉大な業は、異邦人の土地でも評判になっていたようです。苦しむ娘
のために、女はあらゆる手を尽くしましたがダメでした。でも娘が癒されるなら、
恥も外聞もありません。イエス様の評判を聞いた女は、最後の望みを、ユダヤ人の
イエス様に託し、イエス様に救いを求めて、やってきたのです。
 今、諸外国から、東北の震災被災地に、暖かい救いの手が差し伸べられています。
国境を越えて、多くの人たちが、痛み、苦しんでいる被災地のために働いています。
ましてイエス様なら、女の痛みはすぐに分かったはずです。ユダヤ人の敵カナン
人だとしても、重い病で苦しんでいる子供がいたら、イエス様なら、すぐに助けて
くださるはずです。それなのにイエス様は女に何も答えようとしません。どうして
でしょう。ずいぶん冷たい態度です。それでも女は救いを求めて大声で叫びながら、
イエス様の後をどこまでも、ついて回ります。ついに弟子たちが音をあげてしまい、
イエス様に「この女を追い払ってください」と頼んでいます。
 そしてイエス様が女に言った言葉は「私は、イスラエルの家の失われた羊の所に
しか遣わされてない」と言う一言でした。「イスラエルの家の失われた羊」とは主人
である神様から迷い出たイスラエルのことです。つまり「イスラエルが神様に立ち
帰って救われるために働くのが自分の役目であって、異邦人の救いのためではない」
とイエス様は言ったのです。イエス様の言葉は意外であり、ショックです。しかし
私達以上にショックだったのは、助けを求めていた女でしょう。
「なんだ。聞くと見るとでは大違いだ。病を癒し、悪霊を追放する憐み深い方と
言う評判はウソだったのか」。もし私がこの女の立場だったら、そう言うと思います。
でもイエス様の言葉には、神様が定めた「救いの順番」が深く関係しています。
例えばシーツの一部をつかんで、シーツ全体を引き寄せるように、神様が最初に
選んだのはイスラエル、ユダヤ人です。ここから始まって、世界全体が神様の救い
に招かれていきます。これが「救いの順番」です。なぜイスラエルなのか。なぜこの
順番なのか。それは神様の領域であり、今の私達には知ることが出来ません。
地上に遣わされたイエス様の役目は、イスラエルの救いです。そしてイエス様が
十字架で死に、地上の生涯を終えて復活されてから、初めてイエス様は弟子たちに
「あなたがたは行って、すべての民を私の弟子にしなさい」(マタイ28:19)と全世界に
向けて伝道するよう命じています。
異邦人の救いが本格的に始まるのは、イエス様の復活後なのです。だから理不尽
のようですが、イエス様は今、異邦人の土地で、異邦人の救いには応じられません。
 こうまでハッキリ断られたら腹を立てて帰るところですが、この女は違いました。
通り過ぎようとするイエス様の前にひれ伏して、「主よ、どうかお助けください」と
さらに願い続けました。最初に「主よ、ダビデの子よ、憐れんでください」と叫び
ましたが、ここでも女はイエス様を「主」と呼び、ひれ伏して助けを求めています。
 ひれ伏すとは、礼拝の姿勢です。女は異邦人でしたが、イエス様を主と告白して
礼拝し、助けを求めているのです。にもかかわらずイエス様の答えは「子供たちの
パンを取って、小犬にやってはいけない」でした。
イエス様は、イスラエルを子供たちと呼び、異邦人を小犬と言っています。家で
飼われていたペットのことかも知れません。それでも、子供たちと小犬との違いは
明らかです。「子供たちのパンを取って、小犬にやってはならない」。「イスラエルに
与えるための救いを取り上げて、異邦人に与えることはできない」。
つまり「異邦人に与える救いはない。あなたの救いにはなれない」とイエス様は
言ったのです。とりつく島もありません。娘を助けたくて最後の希望をイエス様に
託して、救いを求めたのに、異邦人であることを理由に、女は救いを拒まれました。
 イエス様から救いを拒まれる。恐ろしいことです。でも私達は、本当に恐ろしい
と思っているでしょうか。むしろ救いを拒んだイエス様に「ケチ!」と文句を言い
たいのではないでしょうか。「救われて当然」と、私達は思っているからです。
 「子供たち」と呼ばれたイスラエルにしろ、人はすべて神様に背を向けて、神様
から遠く離れています。自分の思いを最優先にし、自分を神様にして生きています。
だから人は誰でも、真の神様を知らない異邦人です。神様に従い、神様を礼拝する
ことが出来ない、心頑なな異邦人です。人は皆、神様を拒む、罪深い異邦人であり、
神様の子供なんかではありません。
 神様の子供は、イエス様お1人だけです。御国の世継ぎとしてふさわしい神様の
子供は、イエス様だけです。だから神様の子供としてパンを食べる権利、神様の
子供としてパンを要求する権利など、元々、人にはないのです。
イエス様が異邦人の女に「あなたのパンはない」と言いました。これを自分のこと
として、私達も聞かねばなりません。神様の子供としてパンを食べる権利がない。
救いの権利がない。御国の権利がない。このひもじさ、みじめさが、罪深い私達、
異邦人である私達の生身の姿です。
そして「あなたのパンはない」と言われた女は、私達すべての異邦人に代わって、
イエス様に言っています。「主よ、ごもっともです」。主よ、おっしゃる通りです。
自分には、子供としてパンを求める権利がないこと、救われる資格のないことを、
女は認めました。異邦人が救われるのは当然ではないこと、確かに自分たちは子供
ではなく小犬だと、女はイエス様の言葉を、まっすぐに受け止めました。その上で
なおもイエス様に迫って言います。
「しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパンくずは、いただくのです」。
 女がイエス様に求めたのは、子供たちに与えられるパンではなくて、子供たちが
食卓から落としたパンくずでした。それも子供たちと一緒に食卓に着くのではなく、
食卓の下で食べることを、女は求めたのです。
「異邦人の私達には、救いの権利がないことは良く分かっています。でもどんな
わずかなパンくずでもいいです。与えられるはずのない救いを、私達にください。
パンくずでいいです。あるはずのない救いを、私達のために創りだしてください。そして主よ、どうかお助けください」。
 あれほどきつい言葉で拒絶されたのに、女は憤慨したり、あきらめたりしません。
それどころか、「主よ」と、くり返し言いながら、イエス様に救いを求め続けます。
イエス様は主であり、あるはずのない救いを、ほんのわずかでも創りだして、
私達をちゃんと助けてくださる。このことを信じて、イエス様にすがりつきます。
するとイエス様は、「婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになる
ように」と言われました。異邦人の女の中に、拒まれても拒まれても、イエス様に
救いを求める確かな信仰をご覧になったのです。そして娘は癒されました。
女はユダヤ人になったのではなく、異邦人のままです。でもイエス様が女に与えた
のは、食べ残しのパンくずではありません。完全なパン、完全な救いです。
神様の前に人は皆、罪に汚れた異邦人です。しかし「罪ある者に与えられるはずの
ない救い、異邦人に与えられるはずのないパン」を与えるため、イエス様は十字架に
つけられました。そして十字架で裂かれたご自分の体を「生きた救いのパン」として
すべての異邦人に向かって、差し出しておられます。ユダヤ人の垣根も、罪と死の
垣根も越えて、救われるはずのないすべての異邦人に、イエス様はご自分の体
を「生きた救いのパン」として、差し出しておられます。
「私は天から降ってきた生きたパンである。このパンを食べるならば、
その人は永遠に生きる」(ヨハネ6:51)
異邦人のどんな汚れも、ひもじさも清めて、神様の子供として永遠に生かすパン。
「生きた救いのパン」を、食卓の下ではなく、神様の子供として食卓に着いて食べる
よう、イエス様が招いてくださっています。だから私達は、どんな逆境にあっても
決してあきらめず、大胆に、イエス様の救いを求めることができます。
「求めなさい。そうすれば与えられる」。これは新年度の年間聖句です。教会が、
イエス様に信頼して求め続けるなら、ありえない救いの奇跡が必ず与えられます。

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